2005年 組合見解および総括

※「2005年総合労働条件改善闘争(春闘)の回答について」 は、 こちら をご覧ください。
組合員の皆さま
2005年06月16日
執行委員長 大橋 英明
組合員の皆さまこんにちは。
今次春闘の取り組み、および会社業績の確定から再開した事務折衝を経て、先週までに、「2005年度賞与について」会社側と手交しました。
以下に組合見解および総括をお伝えします。


【総評】
 昨期春闘より、ニフティ労組のような一時金の月数要求を行う組合では、国際会計基準を意識したグループ連結業績の重要性を考慮してきた結果、春闘回答時点では月数回答が得られない状況が発生している。これは一時金交渉において業績連動の仕組みを取り入れている組合と同様に、会社業績の見込み段階では一時金交渉を確定せず、単体業績の確定を元にして、さらにはグループ業績をかんがみて、一時金交渉を妥結する時流によるものである。結果として春闘交渉期間中に占める一時金交渉のプライオリティは下がって来ていると言わざるを得ない。
 そのような背景から、今次春闘の取り組みでは、「賃金水準の維持」を前提として労働協約内容の改善見直し、特には「改正育児・介護休業法」への対応ならびに「次世代育成支援対策推進法」への対応、それらに関連して「家族手当の見直し」、さらには働く組合員一人一人を「人財」として捉え、働きやすさや働きがいにつながる「新人事制度」、「社員教育の充実」、「組織風土の醸成」について集中的な議論を労使で行ってきた。
 これらについて様々な事務折衝を重ねた結果、組合員の考えに基づく執行部の主張が、より良い形で「Wing2005」などの各種制度に反映されたことや、様々な制度運用のガイドラインとして会社側に受け入れられたことをここにご報告するとともに、今後もよりよい制度づくりとその運用に向けて継続的に労使の対話を続けて行く決意であることを申し上げたい。
【一時金】
 去る 2月24日の要求提出にあたっては、要求のポイントでお伝えしたとおり、2004年度の業績としては、2003年度決算に比して営業利益の増加を見込むことから、前年度回答として受領した4.95ヶ月をベースとした時に、組合員の利益への貢献として0.1+αヶ月の上積みがふさわしいとの根拠により、要求月数を決定した。
以降、春闘期間中は会社業績の確定前であるため、労組側から会社側に要求主旨の説明を行うにとどまったが、要求主旨は会社側の理解を得られ、回答月数の折衝は業績確定後行いたい旨、回答を得た。その後、会社業績およびグループ業績確定後の5月下旬から事務折衝を再開し、回答月数の詰めを行った。
会社側の見解としては、「前年に比して増益であること、またその中身についてはコスト削減等の事業構造改革による健全なものであること。さらに入会者数の増加といった好転を評価する一方で、ニフティの事業特性であるストックビジネスにおいて2年連続の減収は非常に重く受け止めざるを得ない」という危機感を持っている。一方で、「組織改革やこれからの事業構造改革に直面し、それに貢献して行く組合員のモチベーションを考慮して前年比プラス方向で回答したい」との考えにより「4.97ヶ月」の提示を受けた。これは、前年回答比で14,500円の増額回答となる。
執行部としては、要求主旨に基づき満額回答を目指したいところではあったが、創業以来初めての2年連続の減収は重く受け止めるべきであることから「経営側とその意識が強く共有できていること」を改めて確認し、さらには事業構造改革に向けて経営側のリーダーシップを強く求めた上で、社員一人一人の貢献を評価したプラス方向の回答であることから交渉妥結に至ると判断し手交した。
【次世代育成支援対策について】
 「次世代育成支援対策のための行動計画策定」については、昨年の春闘交渉において「次世代育成支援対策推進法」の行動計画を策定するための労使協議を行うことを確認した。これは厚生労働省が推進する少子化対策の一環であり、301人以上の労働者を雇用する事業主は、平成17年4月1日以降、速やかに具体的な取組み(行動計画)を届け出る必要がある、という法令に基づくものである。
会社側から提案された行動計画は、法令遵守のもと「働く子育て世代を支援するための環境整備」を主旨として、働き方の見直しや経済的側面など多角的な子育て支援を行っていこうとする、厚労省のガイドラインがベースとなっていた。今次交渉においてはこれをベースとして、ニフティの勤務実態に即した改善をこれに加えたいとの労使双方の思いから、ニフティ労働組合では、まず「現在、子育てと仕事の両立をされている社員の方の実態を把握する」ために、去る2005年3月1日に「家族と育児に関する制度についての座談会」を実施した。この座談会にご参加いただき、貴重な意見をくださった組合員の方々にはこの場を借りて感謝の意を表したい。
この座談会によるヒアリングを通じてうかがえた実態としては、「男性の育児休職が取りやすい環境にない」「通院休暇の取得が1日単位でしかできない」「休職後の職場復帰に不安・不満がある」などの問題・要望であった。この結果を会社へ報告し、協議を重ね行動計画に反映するとともに、会社側からは「社員の利用実態を理解できた。今後より良い制度運用を目指して引き続き労使で意見交換を行い、環境整備に関する対策の検討を随時行ってゆきたい」との回答を得た。
結果今後も継続して労使一体となって次世代育成支援となる対策を検討して行くこと、さらに具体的な問題に直面した場合は、現行制度の改善に向けた協議を行っていくことを確認し、手交に至った。
【家族手当の見直しについて】
今回の見直しにおよぶ背景の一つとしては、次世代育成支援対策推進法の施行という「少子化対策」に関連した経済的側面からの子育て支援という観点がある。そのため、家族手当をこれまでの「基準内賃金」の位置づけから、扶養性の高い「福利厚生」としての扱いに移行させる、という会社側申し入れの基本的な考えに沿って、検討・協議を行ってきた。
これまで家族手当は、かつての高度成長期において特に若年層の賃金水準が低く、専業主婦が一般的な社会状況だったという社会背景における生活給として、手当の充実を図った取組みの結果であった。しかし、近年では共働き世帯の増加などライフスタイルの多様化が進み、さらに成果重視型の人事処遇制度へ移り変わって来た現在では、配偶者手当としての性格が強い家族手当は、見直してしかるべきと考えられる。
さらに、急速な少子化の原因として「仕事と子育ての両立に対する負担感」が指摘されていることから、子育て支援の環境整備を行うべく「次世代育成支援対策推進法」を通じた企業の取り組みが求められている。
こうした背景を踏まえ、「家族と育児に関する制度についての座談会」でも、組合員の方々が日頃お考えになっている家族と職場との関係や働きやすい社内制度についてヒアリングさせていただくと共に、現行の家族手当についてもご意見をいただいた。
その中では、家族手当を扶養性の高い対象者へ充てる「福利厚生」としての位置づけに移行する点について、概ね賛同いただけたものとして、それを踏まえ執行委員会にて議論を重ね、会社側からの申し入れを受け入れることとした。
また「安心して子育てができる環境整備の充実」を求めるご意見が多数あり、現行制度の弾力的な運用や、より良い制度に向けた労使協議の継続を望む声を会社側へ申し入れた。
新制度への変更シミュレーションとしては、現在の家族手当受給者数:90名(2005年1月末現在)の内、現行手当が増額となる方は46名(51%)、ほぼ同一となる方は25名(28%)、減額となる方は19名(21%)である。減額となる方についても、配分原資をより扶養家族が多い方へ振り分ける上記主旨による施策改定と何とぞご理解いただきたいが、一方既得権への配慮から、生計への影響を可能な限り低減する対応として、6年間に渡る移行措置期間を設けてソフトランディングすることとしている点をご理解いただきたい。
以上のことから、会社提案の内容は総合的に評価できると判断し、手交に至った。
【新人事制度】
WING2005については、年始より会社側と「チームによる成果共有を重視した新人事制度導入に向けて」という形で交渉を行ってきた。当初、会社側から提示された内容は人事制度の仕組みだけにとどまっており、全社一体となって「成功のイメージ」を共有できるようなものでは無かった。
そのため組合としては「人事制度は目標の達成の手段に過ぎず、会社の目指す方向性や価値観の提示/共有から議論を始めるべきだ」というきわめてシンプルな主張を続けてきた。
その後、以下の理由に記すとおり今回の人事制度にあわせて行われる各種改革の取組みの全体像が提示された。その改革の全体像からニフティが成功に向けて動きだせるイメージができ、かつその方向性についても賛同できることから、制度改善の取り組みに参画してきた。
<手交にいたる理由>
今回の改革は、全社の取組みとして活動しているJQA(経営品質活動)の考え方をベースにし、以下の三点をまとめて改革するものと理解できる。
・フラット化を目指した組織の再編
・チームの成果共有を目指す人事制度改定
・今回の改革を実りあるものにするための人材育成(役員を含む全社員対象)
今の社内にある閉塞感やモチベーションの上がりにくさ、高い離職率といった状況を変えるためには、単に人事制度を見直すだけではなくこの三位一体の改革をもって取り組んでこそ実現できるものであると考え、組合員にとってメリットがあると判断した。
新しい人事制度を導入するにあたっては、本来であれば3月22日の運用開始日以前に人事部からの説明会が開催できるようにすべきであった。
ただ、今回は上記のような三位一体の改革であり、この改革の背景や全体像についてはその先頭で指揮を執る古河社長自身が社員の前で説明することが重要であり、これを実現した3月30日の臨時ニフティ会議を踏まえて、新人事制度(WING2005)説明会を開催する方が組合員にとっても理解度が深まりやすいと考え、施行時期を前後してしまうが、3月31日から新人事制度の説明会を開催することで会社側と合意した。この場を借りて組合員の皆さまにお詫びしたい。
チーム成果を重視した新人事制度は開始したが、いかなる制度も参画するプレーヤーの意識の高さやモラルによって結果は左右される。したがって制度運用のガイドラインについては、日々是改善の思いで充実させてゆくことを約束したい。
以上

2005年07月07日 11:35 AM